【鋼材の性質】における知識をまとめました。
関連用語もいっしょに覚えることで、より理解を深めることができます。
それではさっそく参りましょう、ラインナップは目次からどうぞ 🙂
目次
鋼材の性質★鋼材の引張試験(応力とひずみの関係)
上記の図解において点Aまでは、応力とひずみは比例の関係にあります。
弾性限度とよばれる点Bまでは、荷重を取り去ったときひずみは消滅して残留ひずみは残りません。
このあと、点Cに達して応力は低下しますが、点Dの下降伏点と降伏棚を経て、再び増加します。
このように、ひずみが増加するにしたがって応力が増加する現象が【ひずみ硬化】です。
この時、ひずみの進行は顕著であり、やがてこの鋼材は破断します。
軟鋼は破断時のひずみが20~30%と大きく、延性に富んでいることが特徴です。
A | 比例限度 | 応力σとひずみεが比例関係を示す限度のこと。
比例限または比例限界とも呼ばれる 比例限度内での鋼材のヤング係数E(σ=Eεで表される比例定数)はおおよそ200kN/mm²=200GPa |
B | 弾性限度 | 荷重を取り去ると応力とひずみが初めの点Oに戻る性質を示す限度
弾性限または弾性限界とも呼ばれる 弾性限度を超えると荷重を完全に取り除いてもひずみが残るが、これを「残留ひずみ」という。 |
C | 上降伏点 | 比例限度を超えて応力度が下降し始めるピーク点 |
D | 下降伏点 | 応力が反転する点 |
E | 降伏棚 | 下降伏点の応力度を保ったままひずみのみ増加する領域
俗に「踊り場」とも呼ばれる |
F | 引張強さ | 応力の最大値
例えば、鋼材の引張強さが400N/mm²の一般構造用鋼材をSS400、溶接構造用鋼材をSM400、溶接構造用耐候性鋼材をSMA400と表す |
G | 破断点 | 鋼材が破断する応力のこと |
いろいろな鋼材の性質
鋼材に一定のひずみを与えたとき、応力が時間の経過とともに減少する現象を【リラクゼーション】といいます。
これは弾性ひずみの一部が【リラクゼーション】によって塑性ひずみに転換するため生じます。
一方で、一定の応力のもとで永久ひずみが時間とともに増加する現象が【クリープ】と呼ばれるものです。
また、破壊の種類もいくつかあるのでチェックしておきましょう。
主な破壊の種類は、延性破壊、脆性破壊、疲労破壊、遅れ破壊の4つです。
破壊の種類 | 特徴 |
延性破壊 | 弾性限度を超えたあと、大きな塑性変形を生じて破壊に至る現象 |
脆性破壊 | 塑性変形をほとんど伴わない破壊 |
疲労破壊 | 鋼材がくりかえし応力を受けたときに発生する亀裂が要因となって生じる破壊現象
静的強さより低い応力で破壊される くりかえし応力の変動幅(上限応力と下限応力の差)が大きいほど起きやすい 鋼材ではある程度のくりかえし回数で強度低下が止まり、いくらくりかえしても疲労破壊しない限界の応力範囲があり、これを疲労限度(疲労限または疲労限界)という。 |
遅れ破壊 | 特に高張力鋼材において、ある時間が経過したときに突然発生する破壊現象
遅れ破壊の原因の1つとして、鋼材に内在する水素が挙げられる 温度が高いほど、腐食しやすい環境ほど、発生しやすいことも知られている |
さらに鋼材の物性に関する用語として、靭性(じんせい)や脆性(ぜいせい)という言葉も大切です。
靭性とは、鋼材の衝撃荷重に対する破壊の起こしにくさの程度を表しています。
一般に、含有している炭素量が少ない鋼材ほど靭性は向上し、靭性の測定にはシャルピー試験が用いられます。
脆性とは、鋼材のもろさの程度を表し、ほとんど変形を伴わずに生じる破壊現象を【脆性破壊】といいます。
なお、延性材料でも原子が動きにくい低温ではもろくなりやすいです。(低温脆性)
また、水素原子などが結晶内に侵入していると原子が動きにくくなりもろくなります。(水素脆性)
以上です。
また鋼材に関する以下の記事もぜひ併せてご覧ください。
ありがとうございました。