PPAP(ピーパップ)に関する要求事項や手続きなどを解説していきます。
目次
ピーパップとは?PPAPに関する自動車の要求事項(品質)や手続きを解説
PPAPというと、ピコ太郎さんのパイナポーアッポーペンを思い出す人もいるかと思いますが…。(笑)
自動車業界の【PPAP】は全く違う意味を示します。(読み方はピーパップ)
PPAPは、Production Part Approval Process(生産部品承認プロセス)の略称で、一般的には「ピーパップ」と呼ばれます。
IATF16949 のコアツールのひとつで、自動車業界で部品などをお客様へ納めるときのとても重要な手続きのことです。
IATF16949は、自動車産業に特化した品質マネジメントシステムに関する国際規格で、世界中の自動車メーカーが、自動車部品の調達基準として採用しているよ
車の部品というのはたとえば、ガラスやタイヤ、カーナビなどのこと。
生産部品は自動車部品メーカーによって製造され、自動車メーカーへ納めるのが一般的です。
そしてこの部品を納める時に自動車メーカーから承認をもらう必要があり、その手続きの事を【PPAP】と呼びます。
この手続きに必要な書類や評価データが細かく規定されており、約18種類もの情報を準備する必要があります。
ピーパップ(PPAP)に必要なデータ!自動車の品質・要求事項
PPAPにおける18種類もの情報(必要)データは以下のとおり。
種類 | PPAP(提出)項目 | 概要 |
1 | 設計記録 | 部品を設計するときに使った図面や仕様書 |
2 | 承認された設計変更文書 | 部品の設計変更をした際の記録 |
3 | 顧客技術部門の承認 | 顧客技術部門によって部品設計を承認してもらった際の記録 |
4 | 設計FMEA | 部品の設計段階で作成したFMEA |
5 | 工程フロー図 | 部品を製造するときの工程の順番や流れを示した書類 |
6 | 工程FMEA | 生産工程を設計する際に作成したFMEA |
7 | コントロールプラン | 部品を製造する際に用いられる材料、設備、検査条件などを生産順に記載した書類 |
8 | 測定システム解析 | 測定時に使用する機器(検査機など)の精度を証明する記録 |
9 | 寸法検査結果 | 実際に製造した部品の寸法を測定した結果 |
10 | 材料試験結果
性能試験結果 |
材料試験結果:部品に使われている材料に問題ないかを証明した記録(危険物質や環境管理規制物質の含有がないかを確認)
性能試験結果:部品の信頼性を証明した記録(温湿度試験、落下衝撃、などの試験結果記録で、テスト項目は顧客の仕様に従い、ない場合は協議のうえ決定) |
11 | 初期工程調査 | 部品の工程能力を示したもの
Cpk=1.67以上の実力が必要 |
12 | 試験所の資格の証明書 | 部品の試験を外部委託する場合は、顧客が承認している試験所でなくてはならない
もしくは国家認可された試験所であれば可能だが、その際は証明書が必要 |
13 | 外観承認報告書(AAR) | 部品の外観(色味や形状など)に顧客からの要求がある場合は提出が必要(例:インパネやカーナビゲーションなど) |
14 | マスターサンプル | PPAPの手続き時に部品を製造しますが、その製造したサンプルを自社で維持・管理するよう要求される
マスターサンプルを保管しておくのは、後になってPPAPの承認時と同じものを作るようにするため 書類がなくても最悪サンプルが存在すれば、生産が可能なことから要求を受ける |
15 | 量産部品のサンプル | 実際に製造した部品のサンプル(初物)を提出(承認後は通常納入品として扱われる) |
16 | 検査具 | 部品の検査時に使用する器具のリスト |
17 | 顧客要求事項適合の記録 | 顧客固有の要求が存在する場合は、その要求事項を明確にしている書類 |
18 | 部品提出保証書(PSW) | PPAPで提出した書類一式の表紙
紙一枚ですが、手続きがCloseしたことを証明するものなので、非常に重要な書類 |
上記におけるPPAPは基本的に、開発中に集めたデータを提出し、量産前まで実施、完了させます。
しかし実際には、量産後の段階でも提出することを求められるケースもあります。
PPAPの提出例(量産後)
- 設備を移管して別の場所で生産する場合
- 部品や加工の外注委託先を変更する場合
- しばらく使用していなかった治工具を再度使用し生産を行う場合
- 試験や検査の方法を変更する場合
- 生産部品を構成している材料/部品を変更する場合
- 生産部品を生産するときに使用している金型や治具を変更する場合
- 製造工程の変更をする場合
- 生産ラインや場所を変更する場合
- 生産設備を変更/改造する場合
基本的に自動車部品メーカーは、一度承認を受けた生産工程の内容を勝手に変えることは許されておらず、小さな変更でも顧客へ届け出る必要があります。
小さな変更であっても製品の品質に影響を及ぼす可能性があるため、上記のような場合でも対応を求められることがあるのです。
一方で関連として、APQPについても併せてチェックしてみてください。
ピーパップ(PPAP)の対応レベルと段階!自動車の品質
PPAPの対応は正直言って、現場サイドからすればかなりの重労働ですよね…。
というわけで、PPAPにも対応レベルというものが存在します。
顧客と協議のうえ対応レベルを決定し、そのレベルに準じた書類を提出します。
特に何も取り決めが存在しない場合は、基本的にはレベル3を適用するのが一般的です。
種類 | PPAP(提出)項目 | 対応レベル
★★★★★ |
1 | 設計記録 | レベル2以上
★★ |
2 | 承認された設計変更文書 | レベル2以上
★★ |
3 | 顧客技術部門の承認 | レベル1以上
★ |
4 | 設計FMEA | レベル3以上
★★★ |
5 | 工程フロー図 | レベル3以上
★★★ |
6 | 工程FMEA | レベル3以上
★★★ |
7 | コントロールプラン | レベル3以上
★★★ |
8 | 測定システム解析 | レベル3以上
★★★ |
9 | 寸法検査結果 | レベル2以上
★★ |
10 | 材料試験結果
性能試験結果 |
レベル3以上
★★★ |
11 | 初期工程調査 | レベル3以上
★★★ |
12 | 試験所の資格の証明書 | レベル3以上(取り決めによる)
★★★ |
13 | 外観承認報告書(AAR) | レベル1以上
★ |
14 | マスターサンプル | レベル2以上
★★ |
15 | 量産部品のサンプル | レベル2以上
★★ |
16 | 検査具 | レベル3以上
★★★ |
17 | 顧客要求事項適合の記録 | レベル2以上
★★ |
18 | 部品提出保証書(PSW) | レベル1以上
★ |
19 | 工程監査 | レベル5以上
★★★★★ |
製品承認をする場合は、その製造工程がしっかり検証された後に行うことが推奨されています。
基本的にPPAPの場合は、正規の生産工程と全く同じ条件の量産体制で生産された製品を顧客に承認してもらう必要があります。
なぜなら暫定工程などの、正規の生産工程とは異なる工程で製造した製品で承認してしまった場合、量産移行後に取り返しのつかない問題が顕在化する可能性があるからです。
ピーパップとは?PPAPに関する自動車の要求事項(品質)や手続きまとめ
PPAPまとめ
- ピーパップ(PPAP)は生産部品承認プロセスのことで、IATF16949のコアツール
- ピーパップ(PPAP)は生産部品を顧客納めるために承認してもらう手続きのこと
- ピーパップ(PPAP)の手続きにおいて必要な提出書類は18種類もある
- ピーパップ(PPAP)は開発段階のみでなく、量産後にも行う可能性がある
- 対応レベルも規定されており、顧客と協議の上レベルを決定
以上です。
ありがとうございました。