こんなご要望にお応えします。
テーマはタイトルどおり【物理の仕事】
定義や原理から例題までもれなく解説していきますので、ぜひ最後までお付き合いください。
それではさっそく参りましょう、ラインナップは目次からどうぞ 🙂
目次
物理の仕事をわかりやすく教えて!重力に逆らってする仕事や負の仕事の例&定義
まずは物理における仕事の定義と原理から解説します。
仕事とは、物体に一定の力F(N)を加えながら、力の向きにs(m)動かしたとき、力は物体にFsの仕事をしたと言えます。(以下、図解参照)
公式は、仕事(W)=一定の力(F)×力の向き(s)【W=Fs】となります。
この式から分かるように、加える力が2倍になると仕事も2倍、動かした距離が2倍になると仕事も2倍になるということですね。
また、仕事の単位は一定の力F(N)×力の向きs(m)より、【N‣m】となりますが、これを1ジュール【J】と呼んでいます。
一方、仕事の原理法則は以下のとおり。
仕事の原理法則
仕事の原理:道具や装置を使っても仕事の総量は変化しない
どういうことかというと、例えば重い荷物を持ち上げるときに、斜面を使う場合と直接引き上げる場合のどちらでも、仕事の大きさは変わらないということです。(以下、図解参照)
斜面の方が力は小さくて済みますが、移動距離が長くなります。
直接引き上げる場合は力が大きくなり、移動距離が短くなります。
ここでひとつ、例題を解いてみましょう。
例題)質量m(kg)の物体を高さh(m)だけ引き上げたい。傾き30°のなめらかな斜面上を引き上げる時、加える力と引く距離は、直接真上に引き上げる時のそれぞれ何倍か。
解答)
仕事の原理により、斜面を用いても直接引き上げても、仕事の大きさは変わらないことを利用して解きましょう。
直接真上に引き上げる場合、加える力はmg(N)、引く距離はh(m)、仕事はmgh(J)となります。
一方、傾き30°のなめらかな斜面を用いる場合、加える力は、
mgsin30°=(1/2)×mg よって力は1/2倍
斜面上で引く距離をs(m)とすると、仕事の原理より、
1/2mgs=mgh より、s=2h
よって距離は2倍となります。
答え【加える力:1/2倍 引く距離:2倍】
物理「仕事」の力や移動の向き!わかりやすく解説
つづいては力や移動の向きについてです。
種類としてはこんな感じに分類できます。
力や移動の向きの種類
- 力の向きと移動方向がちがう場合
- 仕事が0の場合
- 仕事が負になる場合
物理の仕事➀力の向きと移動方向がちがう場合
図のように一定の力Fを加えて力の向きと角θをなす向きにsだけ動かします。
この時の仕事を求めるとすると、s方向における力の大きさはFcosθとなるから、
仕事W=Fcosθ×s
となります。
応力についても併せてチェックしておくとよいでしょう。
物理の仕事②仕事が0になる場合の例
力と物体が動く向きとのなす角が90°のときは、cos90°=0となるので、仕事W=0です。
例としては以下のような場合が考えられます。
- 平面上を運動する物体に働く垂直抗力
- 水平面上を運動する物体に働く重力
- 等速円運動をする物体に働く向心力
- 単振り子のおもりに働く糸の張力
振り子についてはまた別記事でまとめていますので併せてご確認ください。
物理の仕事③負の仕事の例
力の向きと物体の移動方向が反対の場合は、θ=180°でcosθ=-1であるから、
W=-Fsとなり、仕事は負になります。
例としては、平面上を運動する物体にはたらく摩擦力や、鉛直上向きに上昇中の物体にはたらく重力などがあります。
ただし、仕事は大きさのみで向きがないため、仕事の正負は向きを表すものではありません。
力が物体に負の仕事をしたというのは、物体が外部に対して正の仕事をしたという意味になります。
例題)質量m(kg)のボールを手で鉛直上向きに高さh(m)だけゆっくりと持ち上げます。このとき手が物体にした仕事W₁、重力が物体にした仕事W₂を求めなさい。
解答)
ポイントとしては、「ゆっくり持ち上げる」ときは外力は重力とつり合っており、W₁で手がボールに加える力は上向きで移動方向も上向きです。
①手が物体にした仕事W₁=mg×h=mgh(J)
ボールにはたらく重力はmg(N)で、ボールの移動方向と反対(θ=180°)だから
②重力が物体にした仕事W₂=mg×h×cos180°=-mgh(J)
解答 W₁=mg×h=mgh(J)、W₂=mg×h×cos180°=-mgh(J)
物理の「仕事」のいろいろな力をわかりやすく解説
ここで、仕事に関するいろいろな力をまとめておきましょう。
代表的な仕事はこんな感じです。
いろいろな力(仕事)
- 物体が落下する場合
- なめらかな斜面上をすべりおりる場合
- 重力に逆らってする仕事
- 摩擦力のする仕事
物理の仕事➀物体が落下する場合(重力)
物体が落下する場合、質量m(kg)の物体が鉛直方向にh(m)落下する場合、重力mgの向きと物体の移動方向は同じだから、重力のする仕事W(J)は、
W=mgh
となります。
物理の仕事②なめらかな斜面上をすべりおりる場合(重力)
質量m(kg)の物体が傾斜角θのなめらかな斜面上をすべりおりる場合、重力の斜面方向の成分はmgsinθです。
また高さhにあたる斜面上の距離h’は、h’=h/sinθであるから、このとき重力のする仕事W’(J)は、
W’=mgsinθ×h/sinθ=mgh
重力における①と②の仕事量は同じになります。(以下、図解参照)
物理の仕事③重力に逆らってする仕事
質量m(kg)の物体をゆっくりとh(m)引き上げるとします。
引き上げの最初は重力mgよりわずかに大きい力が必要ですが、物体が動きだしたら重力と同じ大きさの力Fを加えることで、物体は等速運動をしながら上昇します。
力は上向きにmgとなり、力の向きと移動方向とが同じだから仕事Wは、
W=Fh=mgh
となります。
物理の仕事④摩擦力のする仕事
摩擦のある面上で、物体を面に沿ってs(m)だけ動かします。
摩擦力f(N)の向きはつねに物体が移動する向きと反対(θ=180°)であるから、摩擦力のする仕事Wは、W=fs(cos180°)=-fs
となります。
わかりやすく教えて!物理の仕事率とは?
同じ仕事をするときに、短時間でこなせれば能率がよいですよね。
この能率のことを【仕事率】と呼びます。
物理的に言うと、仕事率は単位時間【1s】あたりにする仕事の量で表します。
W(J)の仕事をするのに時間がt(s)かかるとき、仕事率P(W)は以下のとおりです。
仕事率P=W/t
そして仕事率の単位は、P=W(J)/t(s)より[J/s]となりますが、1[J/s]を1ワット(記号W)と呼びます。
※1000W=1kW(キロワット)
また一方で、飛行機や自動車などの推進力が空気抵抗や摩擦力と等しくなると等速運動をします。
このときの速さをv、推進力をF、距離sを進むのにかかる時間をtとすると、
仕事率はP=Fs/t=Fv
となります。
ここで例題です!
例題)質量50kgの人が1階から3階まで10mの高さの階段を40秒かかって登りました。
この間に人が重力に逆らってした仕事の仕事率はいくらか求めなさい。
解答)
仕事はW=mghより、50×9.8×10(J)
よって仕事率は、P=W/t=(50×9.8×10)/40=122.5(W)
解答 1.2×10²W
物理の仕事をわかりやすく!定義や重力に逆らってする仕事&負の仕事の例まとめ
物理の仕事 | 公式 |
仕事
仕事の単位:1【J(ジュール)】=1【N・m】 |
W=Fs
物体に一定の力F(N) 力の向きにs(m)動かした時 |
物体がFの力を受けて、力の向きと角θをなす向きにs(m)動かされるときの仕事 | W=Fscosθ |
仕事率
単位時間【1s】あたりにする仕事の量 |
P=W/t
W(J)の仕事をするのに時間がt(s)かかるとき |
仕事率と速さの関係 | P=W/t=Fv
速さをv、推進力をF、距離sを進むのにかかる時間をtとする |
仕事の原理 | 道具や装置を使っても仕事の総量は変化しない |
以上です。
ありがとうございました。