歯車とは、2個の円盤の接触面上に、一定の条件に従った凹凸、すなわち「歯形」をつくって嚙合わせると、接触面に生じるすべりを取り除き、回転を確実に伝えることができるものです。
そして歯車の特徴を簡単にまとめると以下のとおり。
歯車の特徴
- 回転を確実に効率よく伝達できる。ただし、2軸間の距離が比較的短いときに使用される。
- 歯車の歯数を変えることによって、回転比を容易に変えることができ、その回転は終始一定である。
- 耐久度が大きい
- 2軸が平行でなくても、回転を伝達できる。ただしこの場合は、かさ歯車、ねじ歯車、ウォームギヤ対などを用いる
よって歯車は、伝動装置、変速装置などに広く用いられています。
てなわけで、今回のテーマは【歯車の種類と歯形】
歯車と歯形についてサクッと確認していきましょう!
目次
歯車の分類と種類
まずは2軸の関係から、種類と用いられる歯車を分類するとこんな感じです。
2軸の関係 | 種類 | 用いられる歯車 |
2軸が平行な場合 | 円筒歯車
ラック |
平歯車
はすば歯車 やまば歯車 ラック |
2軸が交差する場合 | かさ歯車 | すぐばかさ歯車
はすばかさ歯車 まがりばかさ歯車 |
2軸が平行でもなく、交わりもしない場合 | 食違い歯車 | ねじ歯車
ハイポイド ギヤ対 ウォーム ウォームホイール(ウォーム ギヤ対) |
また上記のうち、円筒面(または円すい面)の外側に歯がつくられているものを外(そと)歯車と言い、同じく内側に歯がつくられているものを内(うち)歯車と言います。
つづいて、歯車の種類についてみていきましょう。
まず歯車には、その形状とかみ合う相手歯車の軸との関係によって以下のような種類があります。
歯車の種類
- 平歯車(スパー ギヤ)
- はすば歯車(ヘリカル ギヤ)
- かさ歯車(ベベル ギヤ)
- ねじ歯車
- ウォームおよびウォームホイール
ちなみに、かみ合う一組の歯車では、大歯車を「ギヤ」、小歯車を「ピニオン」と言います。
1.平歯車(スパー ギヤ)
平歯車は、円周面上に軸と平行な直線歯を刻んだ歯車のことです。
回転運動を直線運動に変えるような場合には、直径の無限大な平歯車、すなわち「ラック」と「ピニオン」が用いられます。
2.はすば歯車(ヘリカル ギヤ)
はすば歯車は、軸線に対して斜めに刻まれています。
なお、はすば歯車においては、歯車軸と歯形の中心線とによってつくられる角が「ねじれ角」です。
また、はすば歯車のなかで、斜め歯を中央で折り曲げて山形にしたものを【やまば歯車】と言います。
3.かさ歯車(ベベル ギヤ)
かさ歯車は、円すい面上に放射状の葉を刻んだ歯車のことで、ちょうど傘を広げたような形状をしていることから名づけられたとされています。
またかさ歯車をさらに分類すると以下のとおりです。
すぐばかさ歯車 | 歯を放射状に設けたもの | |
はすばかさ歯車 | 歯が傾斜しているもの | |
まがりばかさ歯車 | 歯が円弧の一部からなっているもの | |
ハイポイド ギヤ対 | 2軸が同一平面上で交わらないもの |
4.ねじ歯車
ねじ歯車は、軸が互いにある角度で交わる場合に用いられ、一般に90°の場合が多いです。
はすば歯車とよく似た形状をしています。
5.ウォームおよびウォームホイール
台形ねじを切った軸をウォーム(芋虫の意味)と言います。
またウォームにかみ合うように台形ねじの歯形が刻まれており、これをウォームホイールと言います。
ウォームとウォームホイールの組み合わせで呼ぶときはウォーム ギヤ対(つい)と呼ぶことが多いです。
またウォームの山は、ねじと同様に、二条、三条などに切られる場合があります。
歯車の歯形について
歯車の歯形は、インボリュート曲線によって形成され、インボリュート歯形と言います。
インボリュート歯形は、製作が容易であり、またかみ合いにおいて両軸間の距離に多少の狂いがあっても影響されないことがメリットです。
一方、歯形の大きさには次のような表し方があります。
モジュール | メートル法による歯車の歯形の大きさを示す場合に用いられるもの(mの記号で表す)で、最も多く使用されている
モジュールmは、ピッチ円の直径d(mm)を歯数zで除した値で式は以下のとおり モジュールm=(ピッチ円の直径mm)/歯数=d/z(mm) モジュールは、歯末の高さと等しく、その値が大きいほど歯形は大となる |
ダイヤメトラル ピッチ | インチ寸法による歯車の歯形の大きさを表すのに用いられる(Ⅾpで表す)
歯数zをインチ寸法で表した歯車ピッチ円の直径で除した値であり以下の式で表す ダイヤメトラルピッチDp=歯数/ピッチ円の直径(インチ寸法)=z/d ピッチ円直径の1インチ(25.4mm)当たりの歯数を示しており、このDpの値が小さいほど歯は大きい |
円ピッチ | 円ピッチ(pで表す)は、ピッチ円の円周の長さを歯数で除したあたいであり、以下の式で表す
円ピッチp=ピッチ円周の長さ/歯数=πd/z(mmまたはin) |
以上のうち、JISでは、モジュールを用いて歯の大きさを表すこととしており、以下の表は、JISに定められたモジュールの標準値を示したものです。
歯直角モジュールの標準値(1mm以上の場合)
歯直角モジュールの標準値(1mm未満の場合)
※参考【JIS B 1701‐2】
ここでモジュールとは基準ピッチを円周率πで除した値と定義しています。
Ⅰを優先的に、必要に応じてⅡの順に選びましょう。
また*はできるだけ避けるのがよいとされています。
以上です。
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ありがとうございました。